色々あるけれど、たのしくいきてます。

しがないオタクの大きな独り言です。

朗読劇「デストルドー9クローゼット・ドラマ If&True」を忘れたくない。

 

出会いは、昨年九月のこと。

読み返せば言葉も感情もまとまっていない衝動だけの感想をつづったブログを書いていたあの舞台の話である。

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現在公式サイトが閉鎖(?)中であったので、詳しくは公式Twitterアカウントを確認いただきたい。

mo-02usa.hatenablog.com

当時の気の触れている感想はこちらからどうぞ。

 

世界を覗き見する贅沢

アニメーション作品なればよくあることかもしれないが、オリジナル舞台作品において滅多にないと思われる舞台本編のスピンオフ朗読劇を観劇してきた。

時は2020年1月11日、12日。場所は四ツ谷シアターウィング。

これを書いている今、すでに観劇から二か月も経過していることに驚きを隠し切れない。

長い長いトリップだ。携帯のメモに箇条書きのような感想が残っているのを見つけて、表示されている日付に愕然としてしまった。

 

2019年9月に眠りについた少年たちのクローゼットドラマ。

true」と「If」に分かれた物語。

チケット販売前に公演ごとの演目が発表され、「あれ…?全通しないと聞くことのできない話存在するじゃない…??」と気がつき友人と血眼になりチケット争奪に参戦。無事に全ての公演を観劇することができました。

友人に感謝。(この友人は先着に強いので、お蔭様で最前列で観劇することも叶い狂いに加速度を増すことができて最高だった。一緒の墓に入りましたわよ)

生きていても、死んでしまっても苦しい物語に再び潜り込む。

会場に敷き詰められた花びら、羽を休める蝶々。

手を伸ばしたら届いてしまいそうなその距離で物語がまた始まる。

私もその世界で生きているみたいに、時間が過ぎて、止まったままである。

 

母の子守歌

本編PVにおいて、「母の子守歌」として歌われていた楽曲がある。

 おそらく、小早川家で歌われていたものではないかと考察されていた。

(加えて小早川幾実役の寺木慧佑さんが個人の配信の場でこの楽曲を口ずさむという一幕があり、デスナインに心を取り残されていたオタクたちは死屍累々と化したともいわれている)

そんな「小早川家の子守歌」でクローゼット・ドラマは幕を開ける。

歌うのは「母」である織原紅だ。彼女の歌声で少年たちは眠りにつく。

叶うのであれば、紅の歌声のバージョンも配信してほしい思いです。

berceuse

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  • 前田大介 & ERIKA
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

真実の物語

私たちが見届けた9日間に至るまでの物語。

真実なんて嘘だって言ってくれよ。

これが真実でよかった。

そんな感情が入り混じる物語たちでした。

 

・賢者と愚者のパレード

まんまと二階堂優に騙された。

今作品における二大推しである二階堂優と守野純によるヒトコマ。

「先生」の心の隙を突く悪い少年だった。

二階堂優は読めない子だという印象が深まり、彼のことが何もわからなくなっちゃいました。本編を観たあとに「詐欺グループのリーダーで頭も回るし、何を考えているかわからないような子だったけれど、極限の中では本質の柔らかいところがみえて好きになった」というような感情を抱いたのですが、これすらまやかしかもしれないなと思わされてしまった。

何よりも、守野先生を丸め込んだあとひとりになって笑いをこらえきれなくなってしまう彼がとても狂気に満ちていて「ひえ…」と声を漏らしそうになった。漏れていたかもしれない。

守野先生はとても明るくて優しい先生の印象だった。それは舞台本編からずっと変わらず。演者である千ヶ崎さんのお人柄も手伝って愛されているキャラクターだなあというのは後述の「If」でも触れますが、そんな守野先生の心の弱いところを暴かれていく様がぞわぞわと何かにむしばまれていくよう。先生と生徒であったふたりの均衡が崩れていく…。ふたりの心の関係性が言葉によって反転していく様子に二階堂優の本質を見たような気になりました。

浦尾さんのお芝居が可愛らしかったりクールだったり、闇にあふれていたりと相手によって表情を変える二階堂優という男を表現するのに、溢れんばかりの引き出しを持っていらっしゃっていて飲み込まれてしまいました。

 

・僕らが愛した心臓

野一色頼を愛していたふたりの少年のお話。

Eクラスが目覚めるまでの一年間、Sクラスをまとめ上げた幾実の積み上げてきたもの。

それに抗おうとした遼とのお話。

「友達ってなんなんだろうな」

きっと私も満足に答えることができないと思う。

理屈で語る幾実と、感情を大切にする遼の対比。そして、感情が先行しているからこそ幾実の言葉を否定できなくなっていく、逃げ道がなくなっていく遼。

大切な幼馴染を、親友を、心臓を護るには。

彼の考えに納得しているはずもないし、同意するはずもないと思っていた彼が打倒Eクラスに賛同していることへの疑問が解けたような気もした。

 

そして、私はこの作品で自分のエゴと向き合う。

どんな結末を願おうとも、何を知っていようとも傍観者である我々に彼を救うすべはないのだと。

 

オイディプスの蝶

今公演最大の涙腺です。

オイディプス王の物語を知っていたのでハッとさせられました。

生まれた時からこの兄弟は「運命が決められていた」のではないかと。だれか嘘だって言ってください。

影の主人公と呼んでも過言ではない、小早川家の物語。

小早川兄弟が夢の中で繰り返していたのは理想の家族風景だった。

父親がいて、母親は口うるさいけれど優しくて、ちょっと喧嘩はするけれど兄弟仲も最高。どこにでもあるような絵にかいたような幸せな家族。

ふたりが願っても、もう叶えることができない光景。

間違いを正すように繰り返す、繰り返す……

でも、ふたりは気がつく。これは夢だと。でも、その何が悪いんだって、こんな未来を願っちゃだめだなんて嘘だって。お兄ちゃんのことが大嫌いで大好きな綜真が、ひと足先に夢から目覚めた幾実のいなくなった世界で決意を述べる。

 

友人のおかげで最前だったので注目していたのですが、本当の最後のシーンで綜真が決意を述べるまで、後方にはけている幾実がずっと彼のことを横目で見ていたのですよ。

そして、最後に小さく微笑んで顔を戻したんです。

覚えていますか、この物語が「true」であること。あの笑顔は本心なんですよ。幾実にとって、本当の笑顔だったと、思わせてほしい。

ここで私の涙腺が決壊しまして、初回公演なのに人権がないまま退出することになりました。

私には、あの笑顔が彼なりの愛情に見えて仕方がなかったのです。

言葉や態度でうまく示すことがもうできないけれど、綜真のことちゃんと大切なんだよなって、見えないところで感じさせるのが幾実だよなって…おもったんですよね…。語彙さんお願いだから早く来て私の感情を代弁してくれ。

 

・祝福されしエンブリオ

涙腺その2です。

全ての元凶といわれ「生まれてこなければ」とさえ揶揄されていた束田唯くんが生まれたころの話。おとなたちがまだイキイキとのびのびと生きていられたころのお話。

生まれてきたことを祝福されない子どもなんていないんだよ。

こんなにも愛されて生まれてきたんだよ。

紀彦おじさんがどんな気持ちで彼を護ろうとしてきたのか、どんな気持ちで育ててきたのか。朗読劇であることを忘れてしまうほどの感情の波に飲み込まれながら、物語を必死に追いかけました。

驚いたのは紅さんのキャラクター。本編ではクールで冷徹な女性。子供を守ろうとあがいた強い女性というイメージだったのですが、本来の彼女は底抜けに明るくて優しくて、友達にいてほしいタイプ。ひたすらに可愛い彼女が、笑えなくなってしまった事実が見ている私たちをまたひとつ苦しくさせます。

どこまでも苦しい運命に飲み込まれていくのだろう。

ああ、どうして彼らが安心して笑顔で過ごせる未来にないのだろう。

本編中、ガヤのお芝居で注文取りを続ける綜真(井上さん)や友人と飲みに来た二階堂くん(浦尾さん)がなにやら相談に乗っている様子だったり、携帯の画面を見せていたり…などといったサブのお芝居を眺めることができたのもお得な気持ちになりました。

 

・初恋と毒薬

タイトルから勝手に千景さんの話になるのかと思っていましたが浅はかでした。

ずっと名前だけ知っていた「ツカダユイ」という存在。

彼を知って、彼と過ごして少しずつ互いを理解し始めた小早川綜真と束田唯のある日の夜の物語。


ふたつの珈琲のどちらかに毒薬がはいっている。

せーので飲み干すことができるか、という唯からの賭けに素直に応じようとする綜真に動揺する唯。ふたりの心理戦(にも似た不器用な駆け引き)を見届ける物語でした。

唯がどんなにどうしようもないクズだとしても「ツカダユイ」である彼を認めて飲み込もうとする綜真。本当にどこまでも不器用な男の子で愛おしい気持ちになるのだ。

「祝福されしエンブリオ」にて、事故が起こる前に幼いふたりが一緒に遊んでいるシーンが存在していた。

今、死のゲームの賭けに出ているふたりは、もしかしたら幼馴染で親友だったかもしれない。友達になろうと思う間もなく、友達だったかもしれない。そんな未来もあったかもしれないなんて、いたずらが過ぎる。

このときふたりは毒は飲まなかった。

でも、もうこの場所に身を置いた時点でふたりとも毒は飲んでいる。

じわりじわりと効いてくる前に解毒剤を探してくれ。

 

・いつか辿り着く未来のために

「If」と「true」が混じりあう、そんな世界での物語。

唯が本名の瀬川皐月として過ごした世界。

デストルドーに触れることなく、子どもたちが死ぬことなく平和に過ごしている世界での物語。だから皐月はその身を隠して束田唯にならなくていい世界。

でも、その世界に小早川兄弟はいない。

織原紅が小早川千紘と結婚していない世界。

小早川千紘と出会っていない世界。

幾重にも枝分かれしたもしもの世界の中でぶつかり合った真実の物語は、小早川兄弟が存在しないことで均衡を保たれていた。大切な「何か」を忘れていることに気がつく皐月。ファンタジーのようなふわふわとした空気の中で進んでいく物語に浮足立つような感覚。不安定になっていく心に追いつけないまま、「その先」を知っている兄弟は皐月に「唯」に未来を託す…。

彼らが「いつか」辿り着くのは明るい未来でありますように。

 

もしもの物語

もしもじゃなくてさ、本当だったらいいのに。

デスナインのシナリオでめちゃめちゃに笑うなんて思わなかった。

楽しい時間しかない「If」の物語たち。と、見せかけてがあるのでやっぱりデスナインだったわ~~ってなるので気を抜けないんですよ助けて。

 

・クローズドクエスチョン

まっていました守野純メイン回!!

本編公演中でもあった守野先生のアドリブコーナーをぐぐっと引き伸ばして一本の脚本にしちゃったんですがどう?とでも言いたげなはじめからおわりまで「もしも」のお話。完全にギャグに全振りなシナリオで登場人物がみんな可愛くなっちゃっていて愛おしかったです。なんでこちらが本編の世界線じゃないんですか?

会場アンケートをもとに進行される「クローズドクエスチョン」は「はい」「いいえ」で答えられるもののみ。「If」になった瞬間になかよしこよししだす小早川兄弟が愛おしいです。も~~お小遣いあげちゃう!何億円がいい??

時間を忘れて暴走を始めた守野先生もとい千ヶ崎さんを幾実さまのままあしらった(?)寺木さんの好プレーも見ものでした。アドリブで役のままの言い回しができるほどに演者さんの中で役が生きているのだなあという至極当たり前の感想を抱いてしまいました。

 

・キュートアグレッション

頭悪いこと言いますね。

これは乙女向けドラマCDですか?

見るシチュエーションCDじゃん…って思いながら聞いてたら綜真の夢子供になってたので混乱しました。ぱぱ、わたしおおきくなったらすぐるさんとけっこんする!

めちゃめちゃ止められそうだな。

「ケーキ何がいい?」ってきかれるところがあの~よかったですね…。あの優しい口調はこども相手だったからなんだな~って思うと腑に落ちました。シチュエーションCDじゃん!??!って思ったので一瞬彼女面しながら聞いちゃいましたもんね反省します。

関係者各位の皆様!!なにとぞ浦尾岳大さまに「ちょっと意地悪な幼馴染彼氏」みたいな題材でシチュエーションCDのお仕事を!!

加えて、今シナリオではずっと見てみたい!と思っていた優VS幾実を見ることも叶ったのが本当に嬉しい。

Q.どこにお金を払ったらいいんですか??!?!!もう払っている??うるさいもっとだ!!

 

A.ここから貢げます

◎公式パンフレット、脚本

destrudo9.booth.pm

 ◎サウンドトラック

翊動

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  • provided courtesy of iTunes

 ◎挿入歌

sheep

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  • 前田大介
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 みんなで貢ごう!

 

幕をこじ開けて

EクラスとSクラスの物語はこれにて一度おしまい。

そんなの、やっぱりさみしいな。

本来だったら叶うことのなかった延長戦。知りえるはずもなかった彼らの葛藤や過去の物語に出会わせてもらえたことが嬉しくて、何度もシナリオを読み返してはあの日に時間を戻してしまいます。

叶うならもっといろんな姿を見てみたい。

クローゼット・ドラマに登場しなかった他のこどもたちの話も知りたい。

きっと、答えを明示されないからこそ私たちはこの世界への欲求が強いままで生きていられているのかもしれない。幕間の物語の中に笑顔があったらそれだけでいいやって思えるかもしれない。いや、終幕後にも笑顔が続いてほしいと思ってしまっている。

一匹の蝶が彼らの人生を狂わせてしまったように、小さな何かがこの先の人生の大きなカギになるのかもしれない。なんてね。

もう少しだけ、ABクラスの物語に出会うまでの間だけ、その幕を覗かせてください。

さようならまでもう少し……眠れ、良い子よ。